神奈川新人ギタリストオーディション


2015.6.21 第44回神奈川新人ギタリストオーディション入賞合格者

   
 伊藤亘希  北方雅之
   
八木下愛海  石川大都
   
表彰   入賞入選
  



2015 年6月21日(日)神奈川県横浜市磯子区民センター「杉田劇場」で第44回神奈川新人ギタリストオーディションが開催された。今回は昨年度の次点入選者 (予選免除)1名を含む38名の応募者総数であった。当日になって棄権欠席者が3人出て予選は34人の参加であった。予選の課題曲はF.タレガ作曲のアデ リータ、自由曲は例年と同じく各自が登録した3分以内の曲を演奏をした。審査の結果6名が予選を通過し本選は7名の演奏となった。本選前の西本悦子副委員 長の講評にあったとおり、課題曲のアデリータの中間部の装飾音に苦労した者が多かった。また、マズルカのリズムをしっかり理解していたものは少なかったよ うに思われた。冒頭のスラー音が良く出ていないという基本テクニックが出来ていない奏者もいたが、基本的なテクニックの見直しと楽曲の様式把握は、たとえ このような小曲であっても細心の注意を払って頂きたいものだ。課題曲の演奏では音楽的要素をも含めて確実に、そして自由曲では自分の個性を充分に発揮しな いと、近年では予選通過は難しくなってきている。ミスタッチについてもかなり厳しい判断が下されるので、思わぬミスで予選通過を逃した者は、次回は充分な 対策を講じて参加して欲しいものだ。
本選では課題曲はF.タレガ作曲のエンデチャとオレムス、それと各自が登録した6分以上10分以内の自由曲を演奏した。本選に残った各奏者は、さすがにレ ベルも高く、聴きごたえのある本選会となった。本選の採点は80点を合格の目安とし、上下10点ずつの幅を持たせて採点し、平均点を出し判定する方法を 採った。結果、平均点で合格点を得た4名がそのまま入賞合格となった。
以下に本選の演奏順に結果と評を記す。

1.石川大都(いしかわ ひろと) <入賞・合格>
予選自由曲:ソナタ・イ長調(D.チマローザ)
本選自由曲:マドリガル・ガボット、演奏会用練習曲第一番(A.バリオス)
課題曲のエンデチャではもう少し自由度のある歌い方を望みたくはなったが、それでも美しい音色で簡潔にまとめていた。オレムスは、ただ確実なだけではなく 抒情性をも感じさせる演奏だった。自由曲のマドリガル・ガボットでも、簡潔に美しくまとめ上げていた。ハイポジションの和音の音程にはもう少し注意を払い たい。ことさら部分を強調することなく全体を的確に美しくまとめ上げる演奏は、この奏者の美点であるようだ。演奏会用練習曲は堅実なテクニックで演奏さ れ、中間部のアルペジオの中からメロディーを浮かび上がらせる部分は特に印象に残った。しかしながら、演奏が進むにつれ、もう少し華々しい要素も欲しい な、という気になって来たのも事実で、将来は聴衆を感動に巻き込むというような要素にも意識を持って、自分の演奏に工夫を加えても良いのではないだろう か。

2.Adrian Martinez(エイドリアン マルティネズ)<入選>
予選自由曲: ファンタジア第28番(F.da.ミラノ)
本選自由曲:ソナタ第13番より メヌエット、パッサカリア(S.L.ヴァイス)
 参加要項にある「オレムスが終わった後、エンデチャに戻らない。」という規定に気が付かなかったのか、エンデチャを繰り返して演奏したため本選は失格と なって、採点対象とはならなかった。これがもし守られていたら高得点を得たかもしれないので残念であった。全体に音量は小さ目だが、透明で柔らかな音色を 持ち、旋律を美しく歌い上げる技術を持っている。課題曲での雰囲気作りは他の奏者達を上回る感じで、美しくまとめ上げていた。自由曲も良い雰囲気と様式感 で演奏されてはいたが、メヌエットはやや平坦な演奏であったし、パッサカリアでは中間部で右手の指をもつれさせるなど、僅かながらミスも出た。実力を発揮 した演奏とは言い難く、調子を整えて再度の挑戦を期待したい。

3.高橋恭平(たかはし きょうへい) <入選>
予選自由曲: プレリュード・ホ長調(M.M.ポンセ)
本選自由曲:想い出(S.アサド) イヴーシュカ(S.ルドネフ)
 メロディーを心豊かに歌わせることのできる奏者ではあるが、今回は実力が発揮されなかったようだ。課題曲エンデチャの冒頭は、単音だけに、なかなか難し いものだが、美しい音色で見事に歌わせていた。しかし和音に入ると音程が定まらない箇所が目立ち、リズムも少し縦割りの感じになってしまった。続くオレム スになると重音のメロディーがビリつき気味でタルレガの音楽表現として充分なものとは感じられなかった。自由曲では、どちらの曲もメロディーの掴み方は上 手いのだが、バス音とメロディー音の双方のビリつきが目立ち、曲の世界に聴衆を引きこむような演奏には至らなかった。押絃のテクニック、和音の音程につい て、よく工夫して再挑戦を期待したい。

4.中里一雄(なかざと かずお)<次点・入選>
予選自由曲: イ短調組曲よりガボット(M.M.ポンセ)
本選自由曲: コンステレーションズ(A. クック)
 課題曲のエンデチャでは情感豊かな歌い出しで和音の部分の演奏も音程がしっかり合っていて美しかったが、些細なミスが出たのは少し残念。オレムスは高音 の歌わせ方も美しく、手堅く、すっきりとまとめてみせた。自由曲コンステレーションズはまだ我が国ではまだ聞き慣れない曲だが、新感覚の曲にも果敢に挑戦 していた。特に大きな破綻も無く見事に演奏されているのだが、それで聴衆の心を掴んだかというと、そうでもないところが高得点に繋がらなかったのだと思 う。冒頭の低音のメロディーは更に深い音色と表現が求められるだろうし、繰り返される部分には変化を与える工夫も必要と思われる。更にこのような北欧系の 音楽の演奏では、一度スペイン系列の音楽から離れて曲を見直してみるのも必要なのではないだろうか。

5.八木下愛海(やぎした まなみ) <入賞・合格>
前回次点により予選免除
本選自由曲:ソナタ「ボッケリーニ讃歌」より第1、第4楽章(M. カステルヌオーヴォ=テデスコ)
課題曲エンデチャは美しい音色とたっぷりの音量で良く歌わせていた。フレーシングも納得のいくものだった。オレムスでは表現はやや単調ながら、すっきりと まとめていた。自由曲では安定したテクニックで堅実で見事な演奏を展開していた。この曲は、かなりの難曲な筈だが、難しいとは殆ど感じさせず演奏しきって しまう技量には素晴らしいものがある。しかし前回も感じさせられたことだが、なぜか演奏が単調に進んでしまうという欠点は今回もまだ残ってしまっていたよ うだ。名曲の中には必ず聞き手をして感動させる要素があるものだ。それらを見出し、より陰影豊かな、より表情豊かな演奏を目指して欲しい。

6.伊藤亘希(いとう こうき) <入賞・合格>
予選自由曲:カプリス第7番(L.レニアーニ)
本選自由曲:序奏とカプリス(G.レゴンディ)
 課題曲エンデチャでは小曲ながら盛り上げ方も上手く、堂々と歌わせてみせた。オレムスではスピード感も良く、テンポの変化も思い切りよく付け、いわゆる 大きな表現で弾ききってみせた。自由曲の序奏ではテンポの変化も良く考えられていて、かつ歌わせ方も大胆で、曲想によくマッチしていたようだ。細かな動き のある部分でも充分なテクニックで適切に処理されていた。カプリスに入るといささか力任せで単調になってしまう部分も見せたが、全曲を通じて、様式や曲想 を良く理解し、感動的に演奏されていた。今回は時代や曲想が似たような自由曲の選曲になってしまったが、別の傾向の曲の演奏も聞いてみたいものだ。

7.北方雅之(きたかた まさゆき) <入賞・合格>
予選自由曲:ジャズ・ソナチネより第一楽章(D.ボグダノヴィッチ)
本選自由曲:ブエノスアイレスの冬(A.ピアソラ)
 課題曲のエンデチャは美しい音色で感情を込めて演奏された。和音を少しばらけさせて演奏した箇所があったが、この曲にはそぐわない感じがした。また、小 さくミスが出てしまったのは残念だった。オレムスはテンポ感良くすっきりと美しくまとめられていた。自由曲は雰囲気も良く始まったが続く速いパッセージで は音が荒れてしまった。ゆっくりしたテンポの部分は雰囲気良く、情感たっぷりに美しく歌わせてはいるが、「深い悲しみを持った表情」というのにはあと一歩 というところではないだろうか。つなぎの部分とゆっくりしたメロディーの部分との対比が見事であった。繊細さと堅実さを持った楽しみな奏者である。今後 は、更に深い表現に裏打ちされた、より味わい深い演奏を期待したい。

入賞者インタヴュー                           (インタヴュー:橋爪晋平)
伊藤亘希さん
-オーディションを終えた今の気持ちを教えてください。
「神奈川新人ギタリストオーディションに出るのは初めてでしたが、合格できて、とても嬉しく思っています。色々なコンクールに出ていますが、全部2位で、今回は一番良い点数で合格できたということで、とても嬉しいです。」
-予選と本選の演奏を振り返っていかがでしたか。
「緊張はしましたが、その中でも落ち着いて自分の演奏に耳を傾けて、ホールの響きを感じながら演奏できました。演奏の手応えもありました。」
-今後の活動などを教えてください。
「一年前に脱サラして以来、演奏と指導の仕事をしていて、これからそれをどんどん広げていきたいです。自主企画などもどんどんやっていきたいです。仕事欲しいです!」

北方雅之さん
-今のお気持ちをお話し下さい。
「実感がなくて、まだ手も震えているんですけど、今年から社会人になり、練習はそれほどできなかったですけど、結果が残せて良かったです。」
-今日の演奏を振り返ってみてください。
「演奏は全然満足はしていないですけど、納得いっていないところは次の機会、来年のフェスティバルで良い納得できる演奏をしたいです。」

八木下愛海さん
-今の気持ちを教えてください。
「いろんな人に応援してもらっていたので、入賞できてうれしいです。これからもがんばります。」
-本選の演奏を振り返ってみて、いかがでしたか。
「すごく緊張したので、これから少しずつ本番に慣れていけたらいいと思います。」

石川大都さん
-今の気持ちを教えてください。
「コンクールというもの自体、受けるのが初めてだったのですが、こういうかたちで賞をとれて嬉しいです。これからがんばります。原(善伸)先生のおかげです。ありがとうございます。アイラブユー♡」
-今日の演奏を振り返ってみてください。
「うまくいって嬉しかったです。ミス無く。それと自分でやりたい事ができたと思いました。」
-今後目標などを教えてください。
「ギターに携わる仕事がしたいと思っています。」



本選採点表