神奈川新人ギタリストオーディション速報

2004.6.27 第33回神奈川新人ギタリストオーディション合格者

 

1位入賞  井上仁一郎
2位入賞  斉藤泰士
 3位入賞 大柴 拓

本選出場者



   神奈川ギター協会主催第33回新人ギタリストオーディションを終えて
                神奈川ギター協会実行委員:菊地 通介委員:川俣 明


 2004年6月27日(日)神奈川県川崎市国際交流センターにて、第33回新人ギタリストオーディションが開催された。今年は43名の応募者があり、これは当オーディション史上2番目に多い応募者数である。うち、棄権者が6名出てしまい、残念であったが、昨年の次点の予選免除者を除く36名で予選が開始され、課題曲ジーグ(ロンカリ)と3分以内の自由曲で審査が行われた。
全体の印象では課題曲のテンポ設定が遅い人や、ジーグという舞曲にもかかわらず、歌わせすぎてリズムが揺れている人が散見された。指任せだけではなく、形式を含め曲そのものへの理解を深めてほしいところである。予選の審査の結果、5名が選出され、今年は予選免除者を含め6名で本選を行う事となった。例年だと7名、多くて8名が選出されているが、選出された5名に続く3名が同点であり、得点数の問題と共に、時間的な問題も考慮され、選出されるに至らなかった。本選は課題曲がスケルツィーノ・メヒカーノ(ポンセ)で、他に6分以上10分以内の自由曲を演奏する。
本選出場者と演奏順、結果は以下の通りであった。

井上仁一郎(入賞) 自由曲:椿姫による幻想曲(タレガ)
 この人は、演奏が自然な流れで、リズム感が良い。歌心があり、各声部の横の流れもバランスが良く、上品な演奏である。課題曲は叙情的な雰囲気で品良く演奏された。自由曲では音色も美しく、トレモロの粒も揃っていて心地良い。ただ、後半のスケールpiのフィゲタで弾かれた箇所では、粒立ちの悪さが惜しまれる。さらに勢いがあったらスケールの大きな演奏になるだろう。


斉藤泰士(入賞) 自由曲:トッカータ・イン・ブルー(ドメニコーニ)
 課題曲は端正な表情で弾かれた。自然な流れで心地良いのだが、もう少し自由に弾いても良いのではないだろうか。全体にストレートな演奏で、自由曲では叙情的な中間部を挟んで前半と後半をアグレッシブに演奏した。曲の構成を考えて弾いたのだろうが、楽譜に書かれているダイナーミクやアーテキレーションを明確に表現したほうが表情豊かな演奏になっただろう。


大柴拓(入賞) 自由曲:リブラ・ソナチネより第2、3楽章(ディアンス)
 昨年の次点で予選免除。課題曲は緊張からか表情が硬く全体に力んでいたが、自由曲になると勢いが良くなり、水を得た魚のように弾かれた。特に3楽章でのリズム感は切れが良く、力強く、曖昧なところがない。流動感あふれる演奏は見事である。


目黒明子(次点) 自由曲:大序曲(ジュリアーニ)
 課題曲は情感たっぷりに弾かれた。自由曲では調弦が曖昧なまま弾かれたのが傷となった。課題曲の・弦をDからEに戻す時、きちんと確認し、ある程度時間を取ってから自由曲に入るべきではなかったか。また指はよく動いているのに、音が不鮮明になる時がある。感性の良さが伝わるので、もう少し正確な演奏であったらと惜しまれる。


松田浩平 自由曲:バーデン・ジャズ組曲(イルマル)
 音がこもっていて、表情に明るさがたりない。緊張しているのだろうか、生真面目な演奏ではあるが、思い切った表現が出来ていないようだ。課題曲はゆっくりしすぎて、躍動感がない。ミスと思われる部分もないのだが、全体に小ぢんまりした演奏に聴こえてくる。後半徐々に調子が上がってきたが、細かいパッセージも明確に発音できると良かった。これだけ弾けるのだから、アピールしようとする精神的な強さが付けば、評価は高くなるだろう。


一星有希 自由曲:イギリス組曲(デュアート)
 自由曲から弾いた。いきなり和音が不鮮明なのは残念、冒頭部分の低音は消音してほしい。安定したテクニックと硬質な音色、強固なリズム感で演奏されるので、聴き手に安心感を与えてくれるが、反面一本調子で曲の持つ表情を生かしきれていない。リズムを縦割りに意識するだけでなく、音の向かう先を強く感じていれば、横の流れも出てくるはずだ。良く練習を積んでいると感じられるので、これから楽しみな奏者である。


 審査の結果、井上仁一郎、斉藤泰士、大柴拓が入賞した。次席に目黒明子、その後に松田浩平、一星有希。入賞者と次席、次席と次の奏者との間には平均点で開きがあった。入賞した3人は来年のフェスティバルに招待演奏される。
 最後に、予選を通過できなかった参加者の中には、丁寧で好感の持てる演奏をしていたのだが、あと僅かの差で選に漏れてしまった人もいる。これらの人達の演奏も捨てがたい。諦めずに、また来年以降の参加を期待したい。(以上)