神奈川新人ギタリストオーディション速報

 

2006.7.2 第35回神奈川新人ギタリストオーディション合格者

 

入賞  林 祥太郎
入賞  高橋 力
 
入賞 比嘉 隆則
 

 


本選出場者


     神奈川ギター協会主催第35回新人ギタリストオーディションを終えて
                        神奈川ギター協会実行委員 菊地通介
 7月2日(日)杉田劇場にて第35回新人ギタリストオーディションが開催された。今年は48名の応募があり、昨年次点で予選免除の1名と、当日棄権者2名を除く45名で予選が行われた。予選課題曲はソルのアンダンティーノOp.32−1。その後に3分以内の自由曲を演奏する。アンダンティーノに関しては、符点、3連符等のリズムが曖昧な奏者が多く、和声感覚、各声部のバランスに神経が行き届かず、伴奏の音を不用意に強く弾いてしまう奏者が多かった。例年に比べると、課題曲に些細なミスをする奏者が目に付いた。次に弾かれる自由曲が良く弾けているのに残念であり、もっと課題曲に重点をおいてほしい。また、2名の演奏者が課題曲の反復を省略するとの指示に従わず、失格とされてしまった。全体のレベルから考えて、聴き劣りする演奏ではなかったので残念であった。今後は演奏規定等をよく把握して臨んでもらいたい。審査の結果、7人の演奏者が選ばれ、昨年次点1人を含む8名が本選で演奏することになった。
課題曲はモレノ=トローバのトリーハ。その後、6分以上10分以内の自由曲を演奏する。本選出場者と演奏順、結果は以下の通り。(空欄は関係者。)

 

本選
出場者












 








 
石村








 












西


堀井義則


結果
林 
信太郎
77
77
75
78
75
76
72
73
75
75
79
75
76
78
80

77

76.125
入選
新野
英之
76
79
76
77
76
77
84
75
78
76
78
77
77
76
79
 77
77.375
入選
斉藤
優貴
81
77
79
79
80
78
76
77
80
75
83
80
78
77
82
80
78.875
次席入選
高橋 力
79
79
84
80
82
77
81
79
82
76
81
80
79
82
80
78
79.9375
入賞
林 
祥太郎
83
80
85
85
81
82
84
82
83
76
84
86
85
83
82
82.8333
入賞 
佐藤
雅也
78
78
83
77
75
72
80
80
75
79
81
76
76
79
77
77.7333
入選
比嘉
孝則
84
78
79
79
79
78
80
83
79
74
78
84
81
83
80
79.8333
入賞  
中里
一雄
80
77
78
78
78
78
71
76
79
74
81
81
80
81
82
78.2666
入選

『/』欄は師弟関係の為、審査員は審査に参加していません。


1.林 信太郎
本選:ワルツ・アン・スカイ(R.ディアンス)フェリシダージ(A.C.ジョビン)

昨年度次点。トリーハは遅いテンポで演奏される。全体にイン・テンポで弾かれたのだが、楽譜に書いてあるテンポの変化をもっと意識的に表現して欲しい。ワルツ・アン・スカイは、やや単調に聴こえた。どことなく頼りなさを感じる。もっとメリハリのある表現、特にリズムに機敏に反応する演奏を聴きたい。途中で1弦の開放弦が急に浅い音に変わるのも気をつけたい。フェリシダージになると、部分的にリズムの生き生きする箇所も見受けられたが、やはり最後まで一貫してしっかりしたリズム感が欲しかった。

2.新野 英之

本選: 大序曲(M.ジュリアーニ)

トリーハはテンポがゆっくりしすぎ。大序曲ではアンダンテ・マエストーソのテンポから考えると、アレグロ・マエストーソはやや遅めに弾かれる。落ち着いたテンポで古典の様式感を出そうとしたのだろうが、もう少し躍動感のある演奏をして欲しい。真面目に取り組んでいるというのが伝わるが、まだ自分の中で納得のいく段階まできていないようだ。これからまだまだ伸びる奏者と予想できるので、今後の努力に期待したい。

3.斎藤 優貴

本選: 小麦畑にて(J.ロドリーゴ)セビーリャ(I.アルベニス)

8歳の小学生。トリーハは大人のような成熟した感情が感じられた。小麦畑ではテクニックの冴えもあり、拍節感を意識したアクセントが効いていて聴きやすい。中間も低音の歌いまわしが自信に満ちたものだった。ただ、指頭奏法なのであろう、弦を擦る音が随所に入る。セビーリャではまだ押弦がしっかりしていない部分もみられ、音の冴えが衰え始める。中間部分のレントも拍節感を意識してアクセントを入れてはいるのだが、その後の音が不鮮明で精彩がなくなってしまった。大胆な節回しで弾こうとしているのに惜しい。(次点)

4.高橋 力

本選:プレリュード、アレグロBWV998(J.Sバッハ)

この人は、自分の良い音、もしくは良い音はこれだという確信を持っているようだ。ただ、楽曲の大きな区切りで必要以上に間を取るのが気になる。トリーハでは美音を生かそうと思って丁寧に弾こうとするのだが、それが災いとなり大人しくなってしまう。もう少し荒れた音になっても構わないから演奏に大胆さが欲しい。プレリュードとアレグロは明快なタッチで弾かれる。達者な指運びには非凡なものを感じさせたが、後半リピートする前に一瞬立ち止まってしまったのが悔やまれる。(入賞)

5.林 祥太郎

本選: 大序曲(M.ジュリアーニ)

トリーハでは美しい音と歌心が感じられる。安定したテクニックがあるので安心して聴くことができる。大序曲では、アンダンテ・マエストーソが遅めのテンポで弾かれた。劇的なフォルテ、繊細なピアノでコントラストを付けている。欲を言えばもうすこしアンダンテを速めのテンポ設定にすれば、次のアレグロ・マエストーソへの移行が自然に聴こえたのではなかろうか。アレグロはスピード感もあるし、どんなに速くなっても荒くならずに流麗な音楽に聴こえるところがこの人の素質を物語る。(入賞)

6.佐藤 雅也

本選: エレジー(J.K.メルツ)

トリーハは丁寧な演奏である。表情も豊かである。エレジーでは高音が細い印象をうけるので、もう少し太い音色で弾かれたならば、さらに聴く側に伝えられたのではないだろうか。アルペジョの部分になると、歌いまわしが影を潜めてしまった。アルペジョ全体が機械的に聴こえ、テンポも速くなり前後とのバランスが崩れてしまう。ラルゴからアンダンテへの連結では、低音が強すぎて違和感がある。どのような表情が適切かを考えてもらいたい。最後のアルペジョ部分ではピアニシモなのにフォルテで弾かれたのは考えがあってのことだろうが、雑に聴こえた。

8.中里 一雄

本選: コンポステラ組曲より前奏曲、ムニェイラ(F.モンポウ)
全体に神経の行き届いたタッチで弾かれるので安定した音楽に聴こえる。クリアーでありながら落ち着いた音色。トリーハは淡々と弾かれた。もう少し感情を入れないと、表情が乏しい感じがする。前奏曲では音を外す細かいミスがあったとしても、音楽を崩すことがない。ムニェイラも快く聴こえた。全ての曲が手の内に入り、相当長い年月弾きこまれた印象をうける。それでも弾きなれたからといって自分勝手にならず、客観性をもって演奏された。そこに情感豊かに弾かれる部分が加われば、さらに良い演奏になったに違いない。