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神奈川新人ギタリストオーディション

 

2008.6.29 第37回神奈川新人ギタリストオーディション合格者

 

入賞  萩尾菜々
入賞  加納英夫
入賞 串田洋司


本選出場者


神奈川ギター協会主催第37回新人ギタリストオーディションを終えて

                    神奈川ギター協会 川俣 明:評文
 2008年6月29日(日)神奈川県横浜市磯子区民センター「杉田劇場」で第37回神奈川新人ギタリストオーディションが開催された。今回は応募者の数が57名と昨年の38名を大きく上回り、予選開始の時刻も例年の午後1時から午前11時と随分と早くなった。当日は残念ながら3名の棄権者が出て結局昨年度の次席入選者(予選免除)を加えた54名でのオーディションとなった。一日で合格者を決めるオーディションとしては、なかなかに大変な応募者の数である。さて予選はN.コスト作曲の「練習曲ニ短調」と3分以内の自由曲が課せられ、その結果7名の予選通過者が選出された。この課題曲のN.コスト作曲「練習曲ニ短調」はギター教則本にも取り上げられている曲でもあり、応募者には少し簡単過ぎたのか大きな間違いや破綻をきたす者は少なくて大きな点差は付かず、結果的に自由曲で審査員に強い印象を与えた者が高得点を得ていた。本選では課題曲にF.タレガ作曲「マリア」と6分以上10分以内の自由曲が課せられ、8名で午後6時からの本選開始となった。結果は3名の合格者(入賞者)となった。次に本選の演奏順に結果と簡単に評を述べると

『/』欄は師弟関係の為、審査員は審査に参加していません。


1.福井 浩気<次席入選>
予選自由曲:練習曲第12番(H.ヴィラ=ローボス)
本選自由曲:夢(G.レゴンディ)
「マリア」は早めのテンポでロマンチックな曲の雰囲気には少し遠かった。緊張したのか目立たない程度ではあったが弾き直しの箇所があったのは痛い。「夢」ではとても美しいトレモロを聞かせてくれたが全体に音が細めでテンポが少し忙しい感じに聞こえた。幅の広い表現と各パッセージ間の繋がりを工夫すると聴衆をより引き込める演奏になると思われる。

2.羽太 朋子<入選>
予選自由曲:クラベリートス(J.バルベルデ)
本選自由曲:マルボローの主題による変奏曲(F.ソル)
 「マリア」は緩急自在で誠に良いテンポであった。思わぬミスタッチは痛かったが演奏は全体に良く考えられていた。音も太く良く響いていた。しかし「マルボロー・・・」になると和音や音の単調さが目立ち始めた。もう少し洒脱な表現も必要かもしれない。音楽を聞かせる力はかなりのものを持っていると思われるので今ひとつの安定さが望まれる。

3.中里 一雄<入選>
予選自由曲:前回次席により免除
本選自由曲:カスティーリャの歌(R.S.デ・ラ・マーサ)
「マリア」は落ち着いた堂々とした演奏で早いパッセージもしっかりときまり好感が持てた。「カスティーリャの歌」ではギターを良く響かせ、テンポの速い部分も速過ぎず安定した演奏だった。もう一つ音色の多彩さが欲しいところだ。フレーズを大きく美しく歌わせることが出来れば更に聴衆を魅了できる演奏になると思われる。

4.木村 正人<入選>
予選自由曲:地中海の歌第2番(M.コロンナ)
本選自由曲:カタルーニャ、セビリア(I.アルベニス)
「マリア」は安定したテンポで演奏され音色も美しい。それだけに中間部のミスは悔やまれる。安定感はあるが少しは冒険も欲しいかな・・・という印象だった。アルベニスは雰囲気作りを更に研究してもらいたい。全体に音量もあり美しい音色で安定した演奏なのだが所々で急に不安定になってしまう箇所が見られたのは残念であった。

5.楠 幸樹<入選>
予選自由曲:フーガ第一番(L.ブローウェル)
本選自由曲:あるタンゲーロの死に寄せる哀歌(M.D.プホール)
「マリア」は快速なテンポで演奏されたが少しあっさりしすぎた印象であった。時折みせる細かなミスが減点対象になってしまったようだ。「あるタンゲーロの・・・」ではうってかわって表情豊かな演奏になった。ハイポジションでは非常に美しい音も聞かせてくれたが速いパッセージでは音が潰れ気味になるところもあり、こういったところが将来の課題かもしれない。しかし全体的には表現力のある安定した演奏であった。

6.串田 洋司<入賞>
予選自由曲:思い出(S.アサド)
本選自由曲:フリア・フロリダ(A.バリオス) フェリシダージ(A.C.ジョビン)
「マリア」は安定していて余裕たっぷりな演奏なのだがサラッとしすぎている・・・とでも言おうか、もう少し聴衆を惹きつける工夫をしてもらいたい。自由曲のバリオスもA.C.ジョビンも曲の面白さが今一つ伝わって来ない。音色は美しく音量もあり技巧的にも安定感がある奏者なので今後はその演奏力を曲の表現にどのように活かしていけるかが課題であろう。

7.加納 英夫<入賞>

予選自由曲:BWV.997よりジーグ(J.S.バッハ)
本選自由曲:南のソナチネ(M.M.ポンセ)
 予選本選を通して安定した演奏を聞かせてくれた。「マリア」の冒頭の2つのミスでヒヤリとさせられたが大きく崩れることなく次第に演奏に対する信頼感を取り戻した。曲の後半は細やかな配慮のある演奏だった。「南のソナチネ」はスピード感のある迫力のある演奏であった。全体に音量も充分で音色も良く、技巧的にも安定している演奏で「欲を言えば・・・」ということになるが、曲の中での「光と影」とでも言おうか明暗の表現が加えられたら、更に味わい深い良い演奏になるかと思われる。

8.萩尾 菜々<入賞>
予選自由曲:はちすずめ(J.S.サグレラス)
本選自由曲:グラン・ホタ(F.タレガ)
 小学校5年生とのことだが、とても優れた奏者である。小型のギターを使っているのかもしれないが、少し音量は乏しいのだが音色はなかなかに美しい。低音の歌わせ方も堂に入ったものだ。全体に表情豊かな演奏が展開されていているのだがステージで演奏している姿は可愛らしい小学生で、かえってそれがまた演奏者の魅力となっている。「グラン・ホタ」は時間の都合からか各変奏が繰り返し無しの一回ずつで、そのせいか曲が進むにつれて少し単調な演奏になってしまっていた。しかし力一杯の演奏はとても好感が持てた。