神奈川新人ギタリストオーディション

 

2009.6.28 第38回神奈川新人ギタリストオーディション合格者

 

入賞  福井浩気
入賞  岩木俊宏
入賞 菅沼聖隆


本選出場者


     神奈川ギター協会主催 第38回新人ギタリストオーディション
                                   評文と写真:川俣 明
2009年6月28日(日)神奈川県横浜市磯子区民センター「杉田劇場」で第38回神奈川新人ギタリストオーディションが開催された。今回は応募者の数が昨年度の次点入選者一名を含む39名であった。予選は12時30分より課題曲のF.ソル作曲の「練習曲Op.35-13(版自由)」と3分以内の自由曲が課せられ、その結果、昨年の次点入選者1名を含む7名の予選通過者が選出された。このF.ソル作曲の「練習曲Op.35-13」は短い簡素な曲であるので、些細なものでもミスを出してしまった者とミス無く演奏できた者には、かなり厳しい点差が付いたようだ。簡素な曲ながら後半の転調部分とか伴奏部分に対する主旋律の歌わせ方とか、工夫すればあちこちに音楽的な魅力を引き出すことのできる曲である筈なのに、そういう工夫をした者は見られず「ミスが有るのか無いのか・・・」というような次元での採点結果になってしまったのは残念であった。結果的に課題曲では目立ったミスをせず、且つ自由曲で審査員に強い印象を与えた者が高得点を得ていた。本選では課題曲のF.タレガ作曲「マリエータ」と6分以上10分以内の自由曲が課せられ、予定どおり17時からの本選開始となった。本選では自由曲、課題曲共に予選を聞いた印象からはちょっと想像できないぐらいハイ・レベルな演奏が続いた。結果は3名の合格点を得た者と合格点に僅かに届かなかった次点者の間に点差が少し開き、3名の合格者(入賞者)となった。尚、一名は自由曲の演奏時間が短く失格となった。以下に本選の演奏順に、結果と評を記す。


1.福井 浩気<入賞>
予選自由曲:前回次点により免除
本選自由曲:ロンディーニャ(R.S.デ・ラ・マーサ) 澄み切った空(Q.シネーシ)
「マリエータ」は良い意味でオーソドックスな演奏で、かつ安定した演奏であった。テンポの変化もロマンチックな表現に良くマッチしていて感じが良い。聴衆に対して充分に音楽として聞かせる技量のある奏者だ。「ロンディーニャ」では早いテンポでのノリも良く、蔭りの部分もしっかりと表現ができていた。細かい傷も音楽表現がしっかり出来ているので大きくは目立たせない。「澄み切った空」ではリズムも小気味良く表現出来て打楽器効果も華やかに現代の曲らしい表現も素晴らしかった。まだ高校3年生ということで今後の活躍が大変楽しみな奏者である。


2.小笠原 宏<入選>
予選自由曲:「内なる思い」より「あこがれ」(V.アセンシオ)
本選自由曲:大序曲(M.ジュリアーニ)
 
「マリエータ」は良く弾けてはいたが右手のタッチが少し浅いのか、もう少し芯のある音が欲しいところだ。装飾音はもう少し素早くシャレたものでありたかった。いまひとつロマンチックな表現に入って行けず、なにかサラッと終わってしまった印象に聞こえてしまったのは残念だった。「大序曲」のような古典の曲の演奏になると予選の自由曲と違って少し欠点が目立ち始めたようだ。確実に音を出していくというトレーニングが不足している感じで、各パッセージの移り際のミスが目立つ。自分の持つスピード感と現代的表現を活かせるよう、更に確実なテクニックを身に付けてもらいたい。


3.山本 浩也<入選>
予選自由曲:華麗なる舞曲(A.タンスマン)
本選自由曲:ハンガリー幻想曲(J.K.メルツ)
「マリエータ」はなかなか堂に入った演奏を聞かせたが、右指が時おり隣の絃に触れてしまうのか、余計に出てしまう音が少し気になった。中間部を欠落させてしまってヒャッとさせたが、後半は落ち着いてまとめていた。「ハンガリー幻想曲」では早い部分は素晴らしいテクニックで華やかに演奏できていたが、遅い部分と言おうか、雰囲気を出すところでは更に一層の音色への工夫が求められるようだ。しかし最後の部分ではテンポも良く、大きく曲を盛り上げて終わって聴衆の拍手も大きかった。


4.岩木 俊宏<入賞>
予選自由曲:BWV995よりガボット・(J.S.バッハ)
本選自由曲:サウダージ第3番(R.ディアンス)
「マリエータ」は他の奏者に比べると音量にはやや欠けるが充分にロマンチックな雰囲気の表現ができて居り、中間部のテンポの取り方も素晴らしい。いろいろな時代の表現を良く理解していて「聞かせる」演奏の出来る奏者だ。「サウダージ第3番」では少し緊張した滑り出しかと思えたが、次第に良い雰囲気の素晴らしい演奏となった。音量も音色表現もずっと色濃く浮き出してきて聴衆の心を捉えていた。曲の性格上、もう少しスタンドプレイがあっても良いかな・・・と思えたが、曲の最後まで安定したテクニックで、緊張感を保って弾ききってまとめたのは見事であった。


5.佐藤 雅也<次点入選>
予選自由曲:ユモレスク(A.バリオス)
本選自由曲:椿姫幻想曲(F.タレガ)

「マリエータ」は右手のポジションのせいなのか音が浅く、くすんだ感じの音色になってしまって全体的にはちょっとダルな印象になってしまった。もう少し大きな歌い回しを工夫したいところだ。「椿姫幻想曲」では端正に演奏してはいるが、もっと聴衆を楽しませるような大胆な表現が望まれる。中間部では大変美しいトレモロを聞かせたが、その他の変奏部分では各変奏の面白さを活かしきれていないようだった。しかし安定感もあり歌心もある奏者なので次回までの進歩が楽しみな奏者である。


6.佐波 岳<入選>
予選自由曲:はちすずめ(J.S.サグレラス)
本選自由曲:大聖堂より第二、第三楽章(A.バリオス)
 残念ながら自由曲の演奏時間が足りず得点集計の前に失格となってしまった。14歳(中学2年生)ということで、いかにも「若い」という印象であった。指を動かすテクニックには素晴らしいものがあるが、まだまだ音楽を表現するという事に関しては至らないという印象であった。その印象は課題曲と自由曲とも変わらず、今後はその素晴らしいテクニックを基に、より高度な音楽表現を身に着けて行って貰いたいと思った。


7.菅沼 聖隆<入賞>
予選自由曲:「タレガ賛歌」より「ソレアレス」(J.トゥリーナ)
本選自由曲: カスティーリャ組曲(F.モレノ=トローバ)
左利きの奏者で普通とは逆にギターを構える。「マリエータ」は安定していて音色も美しく、余裕が感じられる演奏であったがロマンチックな表現としては、もう少しテンポと音色の使い方に工夫が欲しいところだ。全体的に素晴らしいテクニックと充分な音量を持っていながらメロディーを大きく歌いきれず、サラリと各パッセージを通過してしまうように感じられるのが残念に思えた。「カスティーリャ組曲」でも大変に確実で躍動感のある演奏を展開したが第二楽章のゆっくりとした部分となると、どうにも持て余し気味になってしまった。第三楽章では華やかな速い部分と蔭りのある部分との交錯には少し苦労をしてしまったようだ。しかし13歳(中学一年生)ということで将来が大変楽しみな奏者である。