神奈川新人ギタリストオーディション

2010.7.11 第39回神奈川新人ギタリストオーディション合格者

 

入賞  門馬由哉
入賞  荒井一穂
入賞 吉村太志
入賞 細谷雄二


本選出場者


     神奈川ギター協会主催 第39回新人ギタリストオーディション
評文と写真:川俣 明
 
2010年7月11日(日)神奈川県横浜市磯子区民センター「杉田劇場」で第39回神奈川新人ギタリストオーディションが開催された。今回は応募者の数が昨年度の次点入選者一名を含む54名で、昨年を15人も上回った。そのため予選開始時刻は11時00分に早められた。予選は課題曲としてフェレール作曲の「タンゴ第3番(ギタルラ社教本版指定)」と自由曲(3分以内)の演奏を課せられ、その結果、昨年の次点入選者1名を含む7名の予選通過者が選出された。このフェレール作曲の「タンゴ第3番」では、なかなか演奏者の得点に差が付きにくく、自由曲の演奏による得点で予選通過者が決まってしまったようだ。本選では課題曲のバリオス作曲「フリア・フロリダ(版自由)」と6分以上10分以内の自由曲が課せられ、予定どおり17時からの本選開始となった。本選では全体にハイ・レベルな演奏が続いた。審査結果として得点の平均点では7人の間に大きな点差は無かったが、平均点で合格点(80点)を得た4名を入賞・合格とし、残念ながら合格点に届かなかった3名を入選とした。尚、次点者には来年の予選は免除される。以下に本選の演奏順に、結果と評を記す。

1.吉村 太志<入賞・合格>
予選自由曲:華麗な舞曲(A.タンスマン)
本選自由曲:コユンババより第一楽章と第四楽章(C.ドメニコーニ)
「フリア・フロリダ」は音色も美しく、6/8拍子のリズムにも良く乗って味わい深く聞かせた。テンポの変化も気がきいている。「コユンババ」も見事なテクニックで演奏していて聴衆を魅了する演奏ではあったが、なぜか早いパッセージになると音色がくすんでしまったように思えた。曲の早い部分でも明快で美しい音が出せていたら更に高い得点が得られるだろうと惜しまれた。しかし、ゆっくりした部分の表情の豊かさや技巧の確かさなど、素晴らしい力量で今後の活躍が大変楽しみである。

2.島田 賢<入選・次点>
予選自由曲:パガテル?(W.ウォルトン)
本選自由曲:リブラソナチネよりインディア、フォーコ(R.デュアンス)
 
「フリア・フロリダ」では歌としての自由さがもう少し欲しい感じがした。6/8拍子のリズムをもう少し意識したいところで、フレーズも、もっと大きく考えてみるべきではなかったろうか。「リブラソナチネ」では素晴らしいスピードで高度なテクニックで演奏していた。しかし、この奏者の能力からすると、まだまだこの曲の魅力は引き出せる筈で、そういう工夫が他の曲であっても聴衆を魅了することに繋がっていくのではないだろうか。曲の雰囲気作りといおうか大胆な表現というようなものがプラスされれば更にスケールの大きな素晴らしい奏者になるだろうと期待される。

3.門馬 由哉<入賞・合格>
予選自由曲:ソナタK.391(D.スカルラッティ)
本選自由曲:椿姫幻想曲(F.タレガ)
高度なテクニックと音量豊かでまろやかな音色、更に豊かな表現力を合わせ持った奏者である。「フリア・フロリダ」は6/8拍子のリズムも良く考慮され、気の利いたアゴーギクを伴って雰囲気も良く表現されていた。なによりもメロディーが大らかに歌われていて心地良い。「椿姫幻想曲」は手堅い演奏で減点されるような要素は殆ど無かったし、響も美くしかった。曲の性格から考えると、もう少し大袈裟で大胆な表現をして聴衆を惹き込んでくれても良いかと思ったが、それは、このようなオーディションやコンクールの場ではなくて、今後の彼の演奏会に期待すべきものかもしれない。

4.佐藤 雅也<入選>
予選:昨年度次点により免除
本選自由曲:椿姫幻想曲(F.タレガ)
「フリア・フロリダ」では6/8拍子のリズムは良く考慮されてはいるのだが、なんとなくメロディーラインが艶やかに繋がって聞こえてこない。そのためか少し冗長な印象になってしまい残念であった。又、この奏者の楽器はスペイン的な音色を持つ楽器であったが、その特徴を生かしきれていないのか、メロディーラインが沈み込んでしまいがちだった。「椿姫幻想曲」は大変丁寧に演奏されていて、中間部のトレモロも美しかったが、やはりメロディーラインが細い感じで大きな表現には至らなかった。昨年度は次点で本年度も合格を逃してしまったが、しっかりした技巧と堅実な音楽性を持ち合わせた奏者であることは確かなので、何か「殻」みたいなものを破りたいところで、大化けする要素はいくらでもありそうだ。

5.中里 一雄<入選>
予選自由曲:オルガに捧げるプレリュード(J.モレル)
本選自由曲:アッシャーワルツ(N.コシュキン)
年齢がオーディションやコンクールに何の関係も無い事は当然ではあるが、やはり他の6人の奏者とは違った内容の音楽を期待する気持ちになってしまうのは自然というものだと思う。この奏者の予選での自由曲の演奏は、やはり経験の長さみたいなものが滲み出ていて美しく切々と表現されていて素晴らしく思った。さて本選での「フリア・フロリダ」は美しい音色で演奏はされているが、「バルカローレ」の気分を表現して聴衆を惹き込むまでには至らなかった。「アッシャーワルツ」では難しい曲の内容をさすがに良く理解していて、特殊奏法も効果をあげていて他の若い奏者達とも何等遜色は無かったが、本選の演奏を通しての印象では、少し意気込みが勝ってしまったのか、表現が硬い感じがしてしまったのは残念だった。

6.細谷 雄二<入賞・合格>
予選自由曲:蛙のガリアード(J.ダウランド)
本選自由曲:最後のトレモロ(A.バリオス)、フェリシダージ(A.C.ジョビン/R.ディアンス)
 「フリア・フロリダ」は、のびやかな音色で演奏されていて6/8拍子のバルカローレの雰囲気も良く出ていたが、僅かなミスタッチが目立ってしまったのが残念だった。「最後のトレモロ」ではトレモロは充分に美くしかったが、少しテンポに乗り過ぎた感じで、寂しさや哀れさなどへの表現にはあと一歩というところではなかったろうか。「フェリシダージ」も高い技術で演奏されているのであるが、時々高音が細く発音されてしまったのが残念であった。この奏者は音色が美しく、また明快であるので、聞いていて心地が良いが、ときとしてテンポを急ぎ過ぎるときがあり、そうするとその箇所はリズムが単純になってしまうようだ。その辺を克服すれば更に高い得点を得られると思う。

7.荒井 一穂<入賞・合格>
予選自由曲:練習曲第7番(H.ヴィラ=ロボス)
本選自由曲:ソナタより第一楽章(L.ブローウェル)
「フリア・フロリダ」は音色も美しく、6/8拍子のリズムにも良く乗って充分に雰囲気良く仕上げていた。技術的にも余裕がありそうなので中高音部の音色には更に磨きをかけて欲しいものだ。「ソナタより第一楽章」では難しい内容と構成の曲を良く理解して演奏していたようだ。ただ、この曲はもっと多彩な音色と間をもって演奏されると効果が上がる曲のようで、そういう意味ではもう一歩の工夫が必要かとも思われた。明るく美しい音色と素晴らしいスピードを持った奏者で難曲もサラリと演奏できる高い技術も持っている。それぞれの曲の持つ「間」や「音色」を良く工夫し、更にスケールの大きな演奏を期待したい。