2011.6.26 第40回神奈川新人ギタリストオーディション合格者

 

入賞  松澤結子
入賞  原田斗生
入賞 佐波岳
入賞 田中春彦
 
入賞 西村拓也
 

 


本選出場者


     神奈川ギター協会主催 第40回新人ギタリストオーディション
レポート:川俣 明(神奈川ギター協会委員長)
写真:川俣 明、橋爪 晋平
 
2011年6月26日(日)神奈川県横浜市磯子区民センター「杉田劇場」で第40回神奈川新人ギタリストオーディションが開催された。今回は震災の影響もあったのか、応募者の数は昨年より14名少なく、昨年度次点入選者1名を含む40名であった。予選開始時刻は12時30分で、予選の課題曲のF.ソル作曲「エチュードOp.35-4」と各自が予選自由曲として登録した3分以内の曲が演奏された。審査の結果、昨年の次点入選者1名を含む8名の予選通過者が選出された。課題曲F.ソル作曲「エチュード」での冒頭でいたり、思わぬところでミスを出したりして自由曲の演奏にまで影響してしまったと思われる者が少なからず出たことは意外な結果であった。課題曲と自由曲の双方で安定感を示した者が予選を通過したように思われる。本選は予定どおり17時ちょうどからの開始で、課題曲のF.タレガ作曲「プレリュード第1番」と、各自が本選自由曲として登録した6分以上10分以内の曲が演奏された、本選では今回も全体にハイ・レベルな演奏が続いた。審査結果として得点の平均点では7人の間に大きな差は無かったが、平均点で合格点(80点)を得た5名を入賞・合格とし、残念ながら合格点に届かなかった2名を入選とした。尚、次点者には来年の予選は免除される。また、選出した本選出場者は8名であったが1名は棄権ということになったので本選の演奏者は7名であった。以下に本選の演奏順に結果と評を記す。

1.松澤 結子<入賞・合格>
予選自由曲:ペルーのワルツ(J.カルドーソ)
本選自由曲:朱色の塔(I.アルベニス)、サパテアード(R.S.デラマーサ)

課題曲では落ち着いて情感たっぷりの演奏でタレガの上質のロマンティシィズムを良く表現していた。音量も充分で音色もスペインの香りを充分に漂わせ好演であった。「朱色の塔」では速いパッセージも安定してこなしていて雰囲気も良い。何箇所かで少しオーバーかと思われるテンポの変化があったが、曲の流れを考え出すセンスが良いのか、それも却って雰囲気作りに一役買っていた。全体的にはアルベニスの音楽を感情豊かに見事に表現していた。「サパテアード」も同様に雰囲気のある演奏ではあったが、スピードに負けて音の出切らない箇所が少し見られたのは今後の課題かもしれない。しかし、個性的でもあり、表情の豊かさや技巧の確かさ、リズム感の良さなど、演奏者としての才能の豊かさを感じさせ、今後の活躍が大変楽しみである。

2.西村 拓也<入賞・合格>
予選自由曲:カプリス第4番と第2番(L.レニアーニ)
本選自由曲:南のソナティナ(M.M.ポンセ)

 課題曲ではメロディーや和音を良く理解して曲の流れも良いのだが、低音部が少しこもった感じに聞こえて和音の分離がやや悪く、各声部の表現に明確さを欠いていて、残念な感じがした。右手のタッチのもう一工夫で、より素晴らしい演奏に変貌するように思える。「南のソナティナ」でも低音部が重めに聞こえて高音部が軽く浮いてしまっているように聞こえる。3楽章になると少し疲れが出たのか僅かながらミスが出てしまった。しかし演奏全体からは迫力や情感は失われず最後まで堂々と弾ききったのは見事であった。


3.佐波 岳<入賞・合格>
予選自由曲:ソナタK.9(D.スカルラッティ)
本選自由曲:ソナティナ第2、第3楽章(F.モレノ=トローバ)

課題曲では全体的な曲の流れは良いのだが、本来柔らかく奏されるべき和音が突然鋭い音で奏されたりして流れが滞る部分があったのは残念であった。「解釈である。」と言われてしまえばそれまでだが、タルレガの音楽の表現として適切なものであったかは疑問が残ったように思われる。「ソナティナ第2、第3楽章」は高度なテクニックと音量豊かで美しい音色で演奏されてはいたが、第2楽章の縦割りのようなリズムには違和感を覚えた。第3楽章は軽快にスピード感を以って演奏されていたが、やはりリズムが棒になる傾向があった。いまひとつ自由度のある、ウネリのあるリズムを身に付ければ、持ち前のテクニックと共に、豊かな表現力を合わせ持った奏者になると期待出来るだろう。

4.島田 賢<入選>
予選:昨年度次点により免除
本選自由曲:アクアレルよりワルツ風に(S.アサド)、舞踏礼賛(L.ブローウェル)

課題曲ではメロディーや和音を巧く処理をしてはいるのだが、低音部が少しこもった感じに聞こえて高音部を支えきれていない。その音作りが原因なのか、曲がしっとりとは流れて行かなかった。「アクアレルよりワルツ風に」では曲の性格を良く掴んでいて雰囲気のある演奏だった。しかし音量は充分にあるのだが、ある限界を超えると割れた音に聞こえてしまって魅力に欠けた音色になってしまう欠点は是非克服してもらいたいところだ。舞踏礼賛も良く曲を理解して演奏していたが、前半はもう少し緊張感をアピールしておきたいと思った。後半は少し疲れが出たのか僅かながら散漫な部分が見られた。堅実な音楽性を持ち合わせた奏者であることは確かなので、「体力」という言葉が適切かどうかはわからないが、よりスケールの大きな音楽を身に付けてもらいたい。

5.茂木 拓真<入選>
予選自由曲:練習曲第12番(H.ヴィラ=ロボス)
本選自由曲: 12月の太陽(R.ゲーラ)、風の道(A.アッセルボーン)

課題曲は安定した演奏であったが、この人も低音の締まりが悪くて高音が妙に浮いて聞こえてしまって、潤いのある音楽として聞こえてこなかった。やはりタルレガにはタルレガに適した音作りというのも研究してみる必要があるのではないだろうか。「12月の太陽」ではスピード感のある華やかな部分では見事な演奏を聞かせたが、柔らかく、穏やかにゆらぐような場面では音色や表現が単調に聞こえてしまって残念だった。「風の道」でも良い技巧で的確に演奏はしているのだが、雰囲気作りまでには至らないという印象で、次回は右手のタッチを含めた音色への工夫と、曲中の、特に緩やかな部分への更なる表現意欲を期待したい。


6.田中 春彦<入賞・合格>
予選自由曲:スケルツィーノ(A.タンスマン)
本選自由曲:プレリュード(A.タンスマン)、朱色の塔(I.アルベニス)

 課題曲は良く曲の性格を把握していて、高低音のバランスも良く、様式感も充分で素晴らしいタルレガを聞かせてくれた。残念だったのは音作りの好みもあろうが、しばしばサウンドホールを越えて指板の方まで右手がトラベルしてしまうような音作で、少し甘く柔らかい方向に傾き過ぎるように思われた。「プレリュード」「朱色の塔」でもそれぞれ、的確なテクニックで流れが良く、また曲の雰囲気作りも素晴らしいのだが、音色がもう少し芯のある音色でないと、一音一音の説得力に欠ける印象だった。内に持つ情感、表現意欲を、しっかりと表に出せるように、更に音質、音色の変化などを工夫して頂きたい。


7.原田 斗生<入賞・合格>
予選自由曲:練習曲第1番(H.ヴィラ=ロボス)
本選自由曲:組曲イ短調よりガボットとジーグ(M.M.ポンセ)

9歳ということで小学校4年生である。年齢は当然ながら審査に反映されないが、音色も表現力も、未だ体の小さい小学生ということを感じさせない、そういったところを遥かに超えた演奏を聞かせてくれた。課題曲は曲調をよく理解し、曲の陰りのある部分もよく表現されていたが、押絃に苦しいところがあるのか、リズムが少し縦割りになってしまったところが残念だった。「組曲イ短調よりガボットとジーグ」では調弦に少し難があったのが自分で気になったのか、音色がふやけた感じになってしまったり、音の均一感に欠ける部分もあったが、しかし難しいパッセージを難なくこなすだけでなく、曲の内容も的確に表現できる素晴らしい才能の持ち主である。彼の演奏している姿を見ていると、ついつい、もう少し荒削りで将来に対するワクワク感みたいなものも期待してしまうのだが、それは無いものねだりというものだろう。