神奈川新人ギタリストオーディション

 

2013.6.23 第42回神奈川新人ギタリストオーディション合格者

 

   
 高橋那菜<入賞・合格>  木村眞一朗<入賞・合格>
   
 橋本淳史<入賞・合格>  桜井夕樹<入賞・合格>
 
 入賞者 
 
 審査結果講評 

42回神奈川新人ギタリストオーディション

2013年6月23日(日)神奈川県横浜市磯子区民センター「杉田劇場」 神奈川ギター協会主催

                                          写真とレポート:川俣 明 (神奈川ギター協会委員長)

 

2013年6月23日(日)神奈川県横浜市磯子区民センター「杉田劇場」で第42回神奈川新人ギタリストオーディションが開催された。今回は例年のような前年度の入賞次点者(一次予選が免除となる)が居なかった。応募者総数は41名であった。 また、昨年に続いて、ゲスト審査員として濱田滋郎氏に加わって頂いて、今回も、重みのあるオーディションとなった。予選は、課題曲のカルカッシ作曲25の練習曲よりNo.19と、各自が登録した3分以内の自由曲の演奏をすることが課せられた。審査の結果、6名の予選通過者が選出された。西本悦子副委員長の講評にあったとおり、課題曲の演奏に苦労したものが多かったが、やはり課題曲を確実に、また音楽性を以って演奏しないと本選には残れない。   課題曲ばかりでなく、自由曲でも自分の個性を発揮しないと、なかなか予選通過は難しい。また今回は、若い世代ばかりでなく、その上の世代の者でも好演し、健闘したものは多かったが、惜しくも本選には残れなかった。

本選では、課題曲H.ヴィラ=ロボス作曲のプレリュード第一番と、6分以上10分以内の自由曲の演奏が課せられた。本選は非常にハイ・レベルなものとなった。本選の採点は、合格点を80点を目安とし上下10点づつの幅を持たせて採点して平均点を出す方法を採った。結果として、平均で合格点(80点以上)を得た4名全員が入賞合格となった。

以下に本選の演奏順に結果と評を記す。

 

1.高橋那菜<入賞・合格>

予選自由曲: ソナタ・ホ長調K380(D.スカルラッティ)

本選自由曲:大聖堂(A.バリオス)

 たっぷりの音量と美しい音質を持ち、また「若さ、はつらつ」というような雰囲気を持った資質充分の演奏であった。課題曲では下がってくる時の主旋律で小さなもたつきはあったが、それでも終始豪快に歌わせた。中間部の装飾音はもう少し軽やかであるべきであろう。曲の終わりのrallentandoはsmorzandoと考えるかallargandoと考えるか解釈の分かれるところではあるが後者を選択してスケールを大きくまとめていた。自由曲の「大聖堂」ではハイポジションの音程が少々気になったが、第一楽章のメロディーはのびやかに、第二楽章の和音はしっかりと的確に、第三楽章は良くトレーニングされた指さばきで安定感があった。入賞・合格に充分に相応しい演奏であったと言えよう。

 

2.木村眞一朗<入賞・合格>

予選自由曲: 3つのスケッチより(L. ブローウェル)

本選自由曲:椿姫幻想曲(J.アルカス タレガ編)

 安定した技術でスピード感のある、そして迫力のある演奏を繰り広げた。課題曲は音量も豊かで堅実な演奏であったが、型通りと言おうか、さらっとした感じと言おうか、もうひとつ新鮮なものを期待したい印象だった。世界中で頻繁に演奏されている曲で「どこかで聞いた感じ」と感じられてしまうのは無理もないのだが、将来はそれを超えて自己を表現してもらいたいものだ。その素質は充分にあると思われる。自由曲の「椿姫幻想曲」も颯爽とした演奏であったが、ブローウェルやヴィラ=ロボスでは効果を上げていた鋭い音色や、急き込んで盛り上げていくようなテンポは、この曲のようなロマンの要素の強い曲では効果が上がりきらない部分も見られた。しかしながら表現意欲に富んだ彼の演奏は高く評価され高得点を得ていた。

 

3.橋本淳史<入賞・合格>

予選自由曲: 特性的舞曲(L. ブローウェル)

本選自由曲: スペインの思い(J.ブロカ) 舞踏礼賛(Lブローウェル)

 入賞・合格には充分な技術の冴えと安定感を持っている。テンポもしっかりとしていて安心して聞いて居られる。しかし右手のタッチの位置のせいか低音・高音ともに少し明快さを欠いていたように思われ、得点の上で少し損をしたのではないだろうか。課題曲では中間部で軽い思わぬミスが出て減点につながってしまった。この人の演奏も何か型にはまってしまったような印象で(先に書いたように無理も無いのだが)何か新鮮なものを、ついつい期待してしまう。自由曲の「スペインの思い」は安定感のある演奏だったが、更にはテンポの変化や明るい音色と暗い音色などを工夫することによって、より魅力的になるだろう。「舞踏礼賛」も丁寧に確実に演奏されていたが奏者の魅力がもう一つ浮かび上がってこない印象だった。安定感があるというのは、将来この奏者にとって大きな魅力となっていくと思われるが、ブラス・アルファの、音色か表現か、今以上に聴衆を魅了する何かをも身に付けてもらいたいものだ

 

4.桜井夕樹<入賞・合格>

予選自由曲: スペインの城よりトゥレガーノ(F.モレノ=トローバ)

本選自由曲: シンプルエチュードより第1,2,3,5,7,12,8,10,11,13,9(L. ブローウェル)

 この奏者も充分な音量と美しい音色を持っている。ただ楽器が少し新しすぎるのか現代曲になると、もう少しキレのある音が要求されるように思えた。しかしながら全体の印象では若々しく魅力的な演奏を展開した。課題曲では低音のメロディーを太い音ではっきりと鳴らして好感が持てる。中間部も素晴らしいテンポで盛り上げ、続く部分もたっぷりと歌わせた。自由曲「シンプルエチュードより・・・」は、それぞれの曲に相応しい素晴らしいテンポと音色で演奏されてはいるのだが、ブローウェルの現代性を表現するには、あと少しの音色のキレが欲しいと思った。後半では、それぞれの曲間を切れ目が無いような演奏をしていたが、どの曲も同じような印象になってしまって、短い曲の連続ながら長さを感じさせてしまったことは否めない。本選自由曲といえどプログラミングには、いま一つの工夫が必要だったかもしれない。

 

5.鈴木文乃<次点・入選>

予選自由曲: 36のカプリスOp.20より第2番、第15番(L.レニャーニ)

本選自由曲:ヘンデルの主題による変奏曲(M.ジュリアーニ)

昨年は音量不足が大きな欠点であったが今年は見事に改善されていた。それでも中学生ゆえに指への負担が大きいのか、爪の使用の問題なのか、音色がこもりがちで明快さを欠いているのは残念だ。非凡な音楽表現と、素晴らしい指さばきを持っているのだが、今回はそれが充分に発揮されないまま終わってしまったかもしれない。課題曲では低音のメロディーが切れがちになってしまい、中間部では僅かながらミスタッチも出た。自由曲「ヘンデルの主題による変奏曲」は良く弾き込まれているように感じたが、胸の空くような明快さを表現するには、あと一歩という感じだった。フィナーレの部分では弾き淀んだ部分が出てしまって減点材料となって残念だった。しかしながら素晴らしい演奏能力と素質を持った奏者である。次回に期待したい。

 

6.大村貴之<入選>

予選自由曲:シンプルエチュード第14番(L. ブローウェル)

本選自由曲:そのあくる日(R.ゲーラ) 黒いデカメロンより戦士のハープ(L. ブローウェル)

 入賞・合格に値する実力は充分に持っていると思われるのだが、今回はそれが発揮できなかった。音色、音量、技術とも予選では素晴らしかったのに本選では緊張しきってしまったのか、練習が不足していたのか、課題曲は不安定な演奏になってしまった。高音は素晴らしいものがあるのだが低音がクリアに響かず、本人もそれが気になるのか破綻してしまったところがあって大きく減点されてしまった。自由曲「そのあくる日」は柔らかく、しなやかに歌わせてはいたが抒情的なこの曲では中間の速い部分でも、その抒情性を残す余裕がもう少し欲しかった。「黒いデカメロンより戦士のハープ」は堅実に演奏されてはいたが音色の使い分けやテンポの緩急など、いまひとつの工夫が望まれた。演奏の素質は高いものを持っている奏者と思われるので、精神面を逞しくし、また次回に期待したい。